近自然工法とは何か

−スイス・ドイツ・オーストリアの川、眺め歩記−

孫田 敏@ARCS 


はじめに

 2000年5月、「川の会」の諸氏とスイス・ドイツ・オーストリアの3ヶ国で「近自然工法」による社会資本整備の事例に触れる機会を得た。1993年秋にドイツ・オーストリアを訪れているので、二度目の訪問ということになる。そのときも「近自然河川工法」を視察するという目的だった。前回は、「近自然河川工法」が日本に紹介されてから日も浅く、さらに私自身渡欧は初めての経験ということで、見るもの全てが珍しく新鮮に映ったものだった。その点今回は大きな感動を覚えることも少なかったかわり、「近自然工法」を比較的冷静に見ることができたのではないかと思っている。本稿では、比較的冷静に見た=主観的に見た近自然工法の事例を紹介したい。訪れた全ての場所を書くわけにもいかないので、主に印象を強くした場所、ということになろう。他の事例は同行諸氏が書かれると思うので、そちらを参照していただきたい。

 今回、渡欧行程の大半は同行諸氏と行動をともにしたが、後半の一部を自由行動にあて、私はオーストリア・ザルツブルクの、ある河川を訪れた。その川は7年前に訪れた川で、当時「近自然河川工法」による改修が進められていたところである。その川がどのように変化したかを見たかったのである。この川については、前回の資料と霧の彼方へと追いやられてしまったかすかな記憶を交えながら少し立ち入って述べたい。

 都合3ヶ国の河川を見たことになる。今回訪れたのはいずれもドイツ語圏の地域である。たぶんに民族的な類似性があり、その結果として自然環境との接し方にも同じようなものがあると思われるのだが、3ヶ国の近自然工法のあり方を見て私には少なからず違いがあるような気がしてならない。それらの違いに着目しながら今回の視察事例をまとめてみたい。また事例をまとめるにあたって私がこれまで感じてきたいささかの疑問、なぜ近自然工法か、を歴史的な背景から紐解いてみたい。

 なお4章は、「コンサルタンツ北海道」No.92に掲載した「ヨーロッパ近自然の旅−ザルツブルク・アルターバッハの紹介−」を加筆修正したものである。

1.近自然工法に至るまで(27.9KB)

1.1  我が国での歩み
1.2  景域保全の歴史と近自然工法
1.2.1 ドイツの景観保全の歴史的展開
1.2.2 スイスの場合

2.チューリッヒの近自然工法(109.4KB)

2.1 走りながら考える
2.2 高茎草本がない

3.バイエルンの近自然工法(618.9KB)

3.1 いわゆる砂防河川
3.1.1 谷止工
3.1.2 流木止め
3.2 木を植える

4.オーストリアの近自然工法(1058.2KB)

4.1 アルターバッハの近自然工法
4.1.1 アルターバッハの概要
4.1.2 一次改修区間
4.1.3 アルターバッハの近自然工法
4.2 近自然河川工法の工事
4.2.1 竣工直後の河道
4.2.2 工事中の様子
4.3 河川空間を利用する文化と近自然工法

.近自然工法とは何か−私見−(22.9KB)

5.1 ものをつくるシステム
5.2 近自然工法とは何か

あとがき・謝辞(13.6KB)

参考文献・資料(37.7KB)


近自然工法に至るまで