レポート目次

  1. 研修に至る経緯
  2. 地理学とARCSの仕事
  3. 研修内容
  4. 学んだこと
  5. 予想外の収穫
  6. ARCSへの提案
  7. 謝辞

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2.地理学とARCSの仕事

私が大学で専攻する地理学の日本におけるの知名度はかなり低い。地理学部がどの大学にもあるイギリスとは違い、日本の大学では地理学が一つのコースとして提供されることはほとんどなく、地理学の色々な分野がそれとは認識されずに別々に教えられている。日本で「地理」というと、平野や河川の名前を覚え地域の特産物や産業について勉強する科目、とイメージが強いと思う。私もイギリスの高校に入るまではそう考えていた。しかし、地理学の実態はとても幅広く、かつ奥深きものだったのだ。

地理学(Geography、ジオグラフィー)の語源を見ると、ラテン語で「geo(ジオ)」は「土・地(Earth)」、「graphy(グラフィー)」は「書く・描く」に由来している。つまり、「Geography」は「地を描く」学問、云うならばこの世界に起こる様々な現象を分析する学問である。一般的には、自然環境に関わる「自然地理」(地学・気候学・生態学など)と、社会環境に関わる「人文地理」(政治学・経済学・人類学など)に分類されるが、「自然」・「人間」要因は密接に関わり合っていることが多い。そのため、地理学はよく「人間と環境の相互関係を学ぶ学問」とも定義される。

ある現象を理解するには、色々な角度からそれを見る必要がある。他の学問が専門分野化される一方、地理学はそれらの学問から得た知識を統合し、様々な時間的・空間的スケールで現象を分析する。大学で地理学を教えるのはその中のある分野を専門にしている人々だが、批判的(クリティカル)なものの見方・広い視野は皆に共通する。地理学は、学問であると同時に方法論でもあるのだ。

ARCSが携わる「みどり」づくりは、地理学と大いに関係している。それは森林資源を利用し人間の身の回りの環境の向上を目指す仕事、地理学の根本にある人間と環境の相互関係を考える分野だと私は捉えている。緑化計画において必要な植物生態や土壌の知識は自然地理の中に含まれる。また、現象の分析に様々な情報を組み合わせて使うことも、地理学的思考に基づく方法だ。ARCSのおこなうようなコンサルティングはまさに地理学者の仕事といっても過言ではないかもしれない。