■日本生態学会釧路大会 ポスター発表■
カラマツ人工林における広葉樹稚樹の分布と生育阻害要因の分析
 −釧路湿原周辺における自然林再生手法の検討−
孫田敏((有)アークス)
渡辺修・渡辺展之((株)さっぽろ自然調査館)
鈴木玲(雪印種苗(株))
田畑克彦(環境省東北海道地区自然保護事務所)
【発表要旨】
 北海道東部の釧路湿原周辺のカラマツ人工林では、これまでの除間伐と林内放牧などの影響によって、広葉樹稚樹の密度が低くなっている。このような林分において、カラマツ人工林から自然林への転換を考える場合には、人為的要因以外に広葉樹の更新を規定している要因を明らかにすることが効率的な自然林再生手法を探るために必要である。そこで、母樹林との距離・林床開空率・林冠開空率・エゾシカ被食圧などから稚樹の更新に影響を与えている生育阻害要因の特定を試みた。

 調査対象は釧路湿原東部にある達古武沼北岸に位置するカラマツ人工林である。面積は約120haで、造林後32年〜40年が経過している林分である。稜線には残置防風林帯として広葉樹林が残されており、種子の供給源となる繁殖個体も分布している。

 調査区は、稜線上の広葉樹林(母樹林)から斜面方向直角に数本の測線を伸長し、それそれの測線上に稜線からの距離が異なるように設定した。調査測線は7本、調査区は30箇所である。調査区の大きさは5m×5mで、調査区内に出現する稚樹については種名と被食の程度を記録後、樹高・前年の伸長量を測定し、植生については出現種を記録、被度(%)・植生高を測定したほか、林床・林冠の全天写真を撮影し開空率を算出した。このほか、母樹林からの距離が異なるようにシードトラップを設置して、飛来種子をカウントし、持ち帰った表土の撒き出しによる埋土種子発芽試験を行なった。

 母樹林から離れるほど、種子の捕捉量が急激に減少しする逆J字曲線を描く、稚樹密度も同様の傾向が見られあるなど、種子供給が広葉樹稚樹定着の要因であることが予測されたが、林床開空率・林冠開空率はほぼ均一で、かつ稚樹数も少なく、光条件と稚樹定着・成長の関係は十分検証できなかった。

 得られた結果から、カラマツ人工林の自然再生手法について議論する。