ARCS TECHNICAL REPORT No.4

第30回日本緑化工学会研究発表会研究発表要旨集,78-79

積雪寒冷地の切土法面への
ペーパーポットによる木本導入試験

○孫田 敏・澁谷健一(日本データーサービス(株))
  
平野裕一・熊谷博文(北海道室蘭土木現業所浦河出張所)
   鈴
木 玲(雪印種苗(株))

1.はじめに

 これまで法面緑化は主にイネ科牧草類を中心とした草本による早期緑化が図られてきた。近年ではこれらのような早期緑化とともに森林への復元も法面復旧の目標とされるようになってきており、植栽工を組み合わせた緑化方法の検討も行われている1)。

 今回、切土法面への木本導入の手法としてペーパーポットを用いた木本植栽を行い、その後の追跡調査を行ったので報告する。

2.試験地の概要

 試験地は北海道日高支庁浦河町に位置しており(図1)、市街地の東端を流れる乳呑川の右岸斜面である。試験地の概況(気象条件等)を表1に示す。

 切土前の森林は、山腹下部〜中腹部はニセアカシアを中心とした二次林で、上部はミズナラ・イタヤカエデを中心とした落葉広葉樹林である。

 試験地は、河川改修のため新たに発生した切土法面である。周辺 の土地利用の関係から、十分な用地を確保することができず、切土の勾配は1:0.8と急になっている。安定勾配を確保できないため法面工は「PCフレーム+アンカー」工法を採用している。

図1 試験地位置図

表1 試験地の概況

施工場所 北海道浦河町東町乳呑川右岸斜面
標高 20〜40m
施工面積 約700平方メートル
地質土質2)  崖錘堆積物
気象条件3) 年平均気温     7.7℃
8月の平均気温  19.9℃
1月の平均気温 -3.0℃
降水量 1131.5mm
最深積雪深 21cm

3.植栽基盤造成 

 植栽基盤は図2に示すように、PCフレーム内にジュートタイプ  の土嚢を積み、ラス金網を布設した後に連続長繊維混入の厚層基材吹付を行った。ただし、導入する木本との競合を避けるため、無種子吹付とした。

4.植栽方法

 前年秋にミズナラの種子を採取し、径3cm、長さ10cmのペーパーポットに播き付けを行い、1998年春に発芽を確認した後、現地に搬入し植え付けを行った。植え付け時期は1998年6月8・9日である。植え付け方法は、図3に示すように、(1)径3cmの塩ビ管を用い植え穴をあける、(2)植え穴にペーパーポットを差込むという手順である。植栽密度は5本/平方メートルとした。 

 法面の大半は専門の業者の手で植栽されたが、斜面下部の一部では付近住民の参加によって同様の植え付け作業を行った。 

図2 植栽基盤の断面図

図3 植え付け方法の模式図

5.追跡調査とその結果

 1998年10月14日に追跡調査を行った。法 面上部、中腹部、下部に2m×2mの方形区を設定し、方形区内に出現するミズナラの樹高の毎木調査を行った。また住民参加による植栽箇所にも方形区を設けた。結果を表2に示した。

 ミズナラはほぼ100%に近い活着率を示した。住民参加による植え付けも100%活 着し、誰でもができる方法であることがわかった。また吹付時には種子を散布しなかったが、秋の調査ではコウライシバやアカザSPの繁茂が確認され、 ミズナラの一部は被圧されていた。

表2 ミズナラの追跡調査結果
上部
中腹部
下部
住民
本数(枯)
24(1)
30(0)
16(0)
9(0)
樹高(cm)
12.4
───
6〜19
12.6
───
6〜21
10.6
───
0〜22
15.0
───
9〜22

(上段:平均値、下段:最小〜最大)

6.今後の展開

 ペーパーポット植栽は種子の採取から始めなければならず、複数種を導入しようとすると数ヶ年かかることになる。本調査地では、今年度以降も入手できた樹種から順次ペーパーポット植栽を進めていく考えである。

1)旭川開発建設部道路第1課:法面木本緑化の手引き,1998
2)北海道室蘭土木現業所:平成7年度乳呑川小規模改修工事法面工調査設計 設計報告書,1996
3)札幌管区気象台 編:1991年版北海道の気候,(財)日本気象協会北海道本部,1992