次の目的地ボンまではあとわずかである。同行者のたっての願いでレマゲン鉄橋を見に行くことになった。暮れゆくラインを眺めながら、その日は近くに一夜の宿を求めた。
翌朝薄暗いうちに目覚める。窓からのぞき見たラインは川霧に包まれていた。まだサマータイムなのだろうか、午前6時30分を廻ったころでも薄暗い。外に出てホテルのまわりを歩き始めるうちに、陽が差し込んでくる。川霧は次第に晴れ、川を上下する船の姿も見え始める。国際河川は通商の大動脈でもある。
ラインはローマ帝国時代より防御ラインとして(沿岸国相互に)の役割を担い、現在でも橋は少ない。人々が動き始める時刻になるとフェリーも動き出す。
レマゲン鉄橋は第2次世界大戦末期、ヨーロッパ戦線激戦の地で、ジョージ・シーガル、ロバート・ボーンの主演による映画の舞台となったところである(「レマゲン鉄橋」:1969年アメリカ・ユナイト映画、監督…ジョン・ギラーミン、1970年日本初公開)。レマゲン鉄橋は大戦末期になっても破壊を免れた数少ない橋で、連合軍は渡航作戦を経ずにドイツ本土に侵攻できるポイントとして、ドイツ軍は橋を破壊することで連合軍の侵攻をくい止めるためのポイントとして、重要な戦略地点であった。物語の筋はすっかり忘れてしまったが、あれから50年経った今でも両岸に橋台だけが残されている。対岸の絶壁を見て、あの中の洞窟に砲台が設置され、こちらを睨んでいたのだろうか、などと当時の状況に思いを馳せた。
|