渡欧の第一歩がウィーンだった。上空から時折見えたシベリアの大地は、人っ子ひとりいないような厳しい佇まいだったことを覚えている。ウィーン上空に達し、着陸態勢にはいると空港周辺の景色が手に取るように見えてくる。さて、どこか懐かしい景色。なんだ、北海道と変わらないじゃないか!
ウィーンの街からドナウへと散歩したのは日曜日。快晴で、「青きドナウ」はどこまでも青く輝いていた。右岸の旧市街から地下鉄に乗って左岸の国際コンベンションセンターで降り、ドナウタワーに昇ってから、旧市街へと歩いて戻った。
水運の盛んな国際河川ドナウの河岸は、海の港のようにも見え、近代的なデザインの港風景で、多くの船が繋がれている。
ウィーンは扇状地に位置していることから、かつてドナウは扇状地面を複雑に分岐しながら流れていた。現在の直線的な河道に改修されたのは約100年ほど前のことである。その後1970年代以降、ドナウの左岸側にノイエドナウ(Neue Donau)が放水路として新たにつくられ、その間の中島・ドナウインゼル(Donauinsel)はレクリエーション用地として整備されている。ノイエドナウよりさらに北東側には旧川(Alte Donau)があり、その水面はボートやヨットなどができる空間として利用されている。旧川との間の中島には国際コンベンションセンターやドナウタワーがあり、その周囲はドナウ公園(Donaupark)として憩いの場が整備されている。
ノイエドナウの水位は上下流の制水水門と中央の堰によって水位が調整されている。堰と水門によりドナウとの間に水位差が生じる。ドナウインゼルの基盤は砂礫で造成されているために、地下で河川水が出入りする。砂礫の間を河川水が移動する間に、汚濁物質などが砂礫に捕捉され、浄化される。礫間浄化と呼ばれる。目詰まりした場合はどうなるのだろうか、という疑問はわいたのだが、確かめようがなかった。
北海道札幌土木現業所・応用地質(株),1994,北海道の川づくり事例調査報告書,112ppを参照
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