オランダ通信

2006年10・11月号 *2006年11月7日*
by 清水 正

★号外(ナイジェリア編)★

皆様、ご無沙汰しております。前回5-6月に次いで、西アフリカのナイジェリアに仕事で滞在しています。その様子を少しでもお伝え出来ればと思い、懲りずに通信を出してみます。前回同様、JICAの開発調査である「ナイジェリア太陽エネルギー利用マスタープラン調査」に参加しており、現地でのモニタリングと、ファイナルドラフトレポートの作成が主な仕事です。

調査で訪ねた3つの村落

1.ジガワ州対象村落(10月18-22日)

 首都アブジャから車で約7時間、北側をニジェールの国境と接するジガワ郡は、相変わらず遠く感じられました。ソルガムや粟といった穀物の収穫が終わったばかりで、6月に来たときより周りの景色が青々しく感じられました。ハウサ族が多くすむ回教徒と多い半乾燥地帯です。導入したソーラーパネルによる電化事業は、技術的に一部問題がありましたが、順調に動いておりホッとしました。聞き取り調査をしていて、よく聞いたことは、1)女性が夜安心して外出できるようになったこと、2)街灯の下で、子供や女性がコーランなどの勉強を遅くまで出来るようになったこと、3)ランプに使っていた灯油代がほとんどかからなくなったこと等があり、生活が社会的に少し豊かになった印象を受けました。使用料金もかなり定期的に徴収しており、将来の修繕費用やバッテリーの交換費用をきちんと積み立てて管理できるかどうかが今後の課題です。

2.オンド州対象村落(10月25-29日)

6月25日にナイジェリア大統領並びに日本大使の現地視察をし、その受け入れ準備もあったためか、診察所の壁も新しく塗られて、道の両脇も整備されていました。牧師でもありこの村のエンジニアでもあるPastiorさんが頑張っており、技術的にも財政的にも余り不備がなく、村長ら長老も支援してくれており、頼もしく思った次第です。ただ残念なのが、補助金の導入を約束していた地方政府のChairmanが汚職等の容疑で警察に拘留中であったことから、補助金については何も進展が見られなかったことです。州政府に今後のフォローを頼んでみましたが、どうなるか不安ではあります。

3.イモ州対象村落(10月29−11月2日)

未電化村落のウムイコロ・オペヒ村は、上記の2つの村より裕福な村落ではあるためか、聞き取り調査をしていても、今回の太陽光電化に対する満足度が低い結果となりました。料金も徴収しておらず、村落会議もほとんど開いておらず、正直なところがっかりしてしまいました。余談ですが、オートバイに南米ペルー産の冷凍サバを積んで売っている行商人のお兄さんにバッタリ会い、前回撮った写真をあげたら大喜び。少し落ち込んでいただけに嬉しくなりました。

首都・アブジャ

前回と違って、乗り合いオートバイ(オカダ)が街中から姿をいっせいに消しました。この10月1日よりアブジャ市内においてはオカダの商業目的での使用が全面的に禁止され、職を失うバイク運転手達による抗議活動(デモ等)が、市内各地で行われることが予想されたりしました。オカダは中国製の100cc程度のオートバイが多く、以前は白い排気ガスを街中にばらまいていましたが、今回は大分空気がきれいになったように感じたものです。ただ、市民の足だったため、未だ不満はくすぶっており、高いタクシー代や不便なミニバスの運行に文句を言う市民は多くいます。

中国とナイジェリアの関係

 この11月4・5日に北京で開催された「中国・アフリカ協力フォーラム北京サミット」には、アフリカ41カ国の国家元首や首相を含む48カ国からの代表団が集まり、ナイジェリア大統領のObasanjo氏も参加。以前は、台湾と国交を結んでいた多くのアフリカの国ですが、最近では、リベリア、チャドそしてセネガルが、台湾との外交を断絶し、中国との国交を結んでおり、実にアフリカ53カ国のうち中国は48カ国と国交を持つに至っています。これも台湾を意識した「一国二制度」に向けた周到な準備の一環なのかなと思ったりします。

 中国の対アフリカ接近は1990年代半ば以降に勢いを増し、その一つの理由が経済成長に伴う資源確保狙いとされています。北京の外交筋によれば、「中国にとってアフリカの重要性は第一に台湾問題、第二に資源獲得、第三に国連での大票田」とのこと。今年1月に発表した対アフリカ政策文書では、「政治的条件をつけずに援助を続ける」ことを柱の一つに掲げています。中国が、アフリカにおいて資源獲得を視野に入れた経済関係の構築を拡大していく中、ナイジェリアもまさに石油産出国として、中国の重要なパートナーとなっています。

 しかし、中国独自の経済支援は、日欧米の先進国から批判を受けているのも現状です。先進国からの債務減免を迫られたナイジェリアに、中国は協調せずに融資を続けて油田の採掘権を獲得。このため、ナイジェリアが中国の融資の返済には応じる可能性が浮上し、世界銀行総会でも批判が噴出しています。

「中国・アフリカ協力フォーラム北京サミット」で、胡錦涛(フー・チンオ)・国家主席らが11月4日に明らかしたところでは、アフリカに対する援助の規模を2009年までに2006年の2倍にし、貿易総額も2010年までに1000億ドル規模と今年より倍増させる計画を発表しました。計画によると、援助の増額のほか、特に貧しい国については2005年末で返済期限の過ぎた無利子融資の債務を免除。学校や病院の建設を支援、アフリカ連合の会議場を建設し、中国への留学の奨学金枠も倍増させるとのこと。今回の調査で一緒に働いているナイジェリア電力鉄鋼省からも、若手幹部2名が、昨年小水力発電の研修に上海周辺で2ヶ月間の研修を受けており、今後も各種の研修が中国で実施されるとのことです。この中国パワーに日本は、押され気味であることは確かで、日本ももう少し頑張れ!!と叫びたくなる思いに駆られた次第です。

(参考 The Economist Oct 28th2006、朝日新聞11月4日等)

最後に

 こんな感じのたわいのない号外ではありますが、少しでも近況をお伝えできればと思って書いてみました。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。