オランダ通信・号外(ナイジェリア編)

2006年5/6月号 *2006年6月11日*
by 清水 正

皆様、ご無沙汰しております。5月23日から4週間の予定で、西アフリカのナイジェリアに仕事で滞在しています。その様子を少しでもお伝え出来ればと思い、首都・アブジャからこんな通信を出してみることにしました。なにしろ、アフリカ大陸は、今回が初めてで、不安と期待が入り混じっていましたが、20日近く発った現在、何とか病気も無く毎日が過ぎています。

ナイジェリアで進めている仕事について

今回関わることになったのは、JICAの開発調査で「ナイジェリア太陽エネルギー利用マスタープラン調査」と呼ばれるもので、日本の八千代エンジニアリングと、レックスインターナショナルの合同案件です。2005年7月から20ヶ月の予定で始まり、私は交代要員として、パイロットプロジェクト運営・参加型開発を担当することになりました。小規模の地方電化計画を進めていく上で、北部のジガワ州並びに南部のオンド州とイモ州の農村地帯(図参照)において、試験的にソーラーパネルを設置し、その経緯を見ながら、ナイジェリア政府の太陽エネルギー利用促進のための方策を提言することを目的としている調査です。

既に3回現地調査が行われており、コンサルタントは全部で9名。団長は中近東やアフリカの経験が豊かな西川氏、その他(株)電源開発からの補強で参加の齋藤氏や、財務分析の専門の高橋氏など経験豊かな人が勢ぞろいしています。啓蒙普及の若林氏は、協力隊ケニアOBで何かと話が合って嬉しくなってしまいました。紅一点の浦本さんは社会経済調査やジェンダー配慮を担当していて、現場でもかなり僻地を訪問することが多く、健康管理に気を遣っています。混成チームかもしれませんが、まとまっているから不思議なものです。

図 パイロットプロジェクト実施村落

今回調査で訪ねた3つの村落

1.ジガワ州対象村落(5月28日−6月1日)

 首都アブジャから車で約7時間、北側をニジェールの国境と接するジガワ郡は、ハウサ族が多くすむ回教徒と多い半乾燥地帯です。パイロットプロジェクトが実施されているガルコン・アリ村は、州都ドゥチェから車で約40分、人口が約4000人の比較的大きな村です。電化されたところから15km離れており、ソーラーパネルが導入されるまでは、夜は灯油のランプで明かりをつけていたところです。試験的に40世帯には個人のソーラーパネルと蛍光灯を、また20世帯には共同で充電するバッテリーと蛍光灯を供与し、町のモスクや学校、診療所にも蛍光灯をつける計画を立て、半年越しでやっと工事が終了し,担当の齋藤氏が今回検査を兼ねて各家庭を訪問したのでした。村人の喜びはかなり大きく、ビデオの撮影で夕方訪れた田中氏曰く、街灯の下で、子供たちが勉強をしていたり、ミシンで裁縫に取り組む村人がいたりと、実に賑やかな夜の村の生活が繰り広げられていることか改めて明らかになった次第です。

今後、村人が使用料金をきちんと徴収し、将来の修繕費用やバッテリーの交換費用をきちんと積み立てて管理できるかどうかが大きな課題といえるでしょう。実際のところ、既に自動車用バッテリーを充電して公共施設の放送設備電源として活用していたこともあり、村民がバッテリーの取り扱いに慣れているためにパイロットプロジェクトが持続・発展していく素地があると判断されている村落です。次回訪問する際に、どうなっているのか楽しみです。

2.オンド州対象村落(6月4-7日)

オンド州はアブジャから車で5時間強かかるナイジェリア南東部に位置し、カカオの産地として有名です。村落対象のオケ・アグンラ村は、世帯数が79とこじんまりとした集落で、カカオやパーム油の現金収入が多く、ヨルバ語を話すキリスト教徒が殆どの未電化村落です。未舗装の道の更に奥には木材伐採の現場があるらしく、丸太を満載したオンボロトラックを何回か見かけました。かつバッテリーの取り扱いに慣れており、同村落では公共施設としてヘルスケアセンター(医療施設として活用中)の電化を要望し、PVシステムによる医療サービスの向上が期待されています。6月下旬にはナイジェリア大統領並びに日本大使の現地視察が予定されており、その準備がこれから行われようとしています。村は酋長によってかなりまとまっており、村落会議も比較的順調に進められました。但し、家の作りが幾分粗末なため、村の一軒では、椰子の木を切り倒した際に屋根が崩壊し、取り付けたソーラーパネルと蛍光灯を再配置する必要に迫られるなど、少し課題は残っているようです。

3.イモ州対象村落(6月8−12日)

イモ州は、石油が算出する海岸沿いの州に接するナイジェリア東南部の州で、イボ語が中心の平坦な土地柄です。パーム油を栽培している農家が多く、道路網や配電線も大分行き届いている印象を受けました。未電化村落のウムイコロ・オペヒ村は、道路沿いを南北に広がる大きな集落で、地元住民はオートバイや自転車を乗りこなして集落内や近隣集落を行き来しています。ディーゼル発電機を所有しテレビを見る家庭が何軒かあるなど、今回の対象村落の中でも比較的裕福な村落ではないかと感じられました。また、行商人が結構訪ねてきており、オートバイに南米ペルー産の冷凍サバを積んで1匹100ナイラ(約80円)で売っているお兄さんや、パーム油を買い付けに来るオンボロのピックアップ(仏製プジョー)など、貨幣経済がかなり浸透しているところだなと思った次第です。予算の関係で、大きな村であるにもかかわらず、設置された80基のPVシステムの恩恵に与れなかった住民も多く、村としてのまとまりに今ひとつ欠けているようです。

首都・アブジャ

 ごく簡単に首都について説明しようと思います。丹下健三が設計したといわれる人工の首都で、街中がまだ建設中のビルだらけでまさに`発展中`の街です。街の真中に、巨大なモスクが金色に光り輝く他は、これといった目抜き通りや商店街が残念ながら無く、特に観光資源も無い為か、お土産屋さんも見つからず、大きいホテル(シェラトンやヒルトン)でかろうじて民芸品や地元の画家による絵画が小規模で売られている程度です。輸入税が高いため、スーパーで売っているジュースやビスケットもオランダの2-3倍の値段で、おそらく地元の人は買わないのではと思うくらいの値段です。路上や道沿いの店で売られているカミソリから、オートバイや日曜雑貨品に至るまで、やたら中国製品が目立ちます。その中で、携帯電話の商売は民営化されており、比較的手ごろな値段で本体やプリペイカードが買えるように設定されており、その恩恵に与ってオランダへもちょくちょく、首都や地方からかけています。

泊っているホテルも実は中国人経営(ゴールデンゲート・金門集団公司)で、停電があったときは自家発電で電気を供給し、インターネットもLANが無料で使えるサービス振り、宿泊料もお手頃感があります。難点は、1階のレストランで夕食が簡単なセットメニューでも1600ナイラ(約1500円)と、割高な点です。街の移動は、一般市民の場合、乗合のミニバスかオートバイの後ろへ相乗りが一般的で、自転車は殆ど見ません。車は、プジョーやベンツの旧式に加えて、トヨタやホンダ、スズキの新車やオンボロ車が多く、クラクションをバンバン鳴らして市内を走っています。治安は思っていたほど悪くなく、夜は一人で外出しないよう気をつける他、歩くときは服装や持ち物に気をつけるようにしていますが、日中は途上国に有りがちな賑やかさとうるささが気になる程度で、特に危険を感じたことはありません。多分、昔の首都だったラゴスは、治安がもっと悪いのかもしれません。

最後に

こんな感じのたわいのない号外ではありますが、少しでも近況をお伝えできればと思って書いてみました。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。