誰にとっての「付加価値」?

沼上 幹

一所懸命に努力・工夫することで「付加価値」をつくり、利益を獲得しようと考える人も多いが、残念ながら「付加価値」は自分の努力ではどうにもならない、ということを人は忘れがちである。前半2文字の「付加」という部分を強調すれば「自分が頑張れば」と思われるだろうが、後半2文字の「価値」の部分に注目すれば、自分だけではどうにもならないことが即座に理解できる。なぜなら、何かに価値があるかどうかは、買い手の側が決めることであって、供給する側か決めることではないからである。

 「付加価値」は、自分が努力した量に基づいて判断するものではなく、買い手の立場に立って自分がどれほど取り換えのきかない存在なのか、自分かいなくなったらどれほど周りが困るか、という観点から考えなければならない。残念ながら、最先端の製品を除けば、パソコン用DRAMを供給できる企業は複数存在し、顧客から見 れば、どの会社も取り換えがきいてしまう。この状況では、どれほど大量の努力を投入したとしても報われることはない。

120326/2012年
沼上 幹(ぬまがみ つよし),2012,沼上幹の組織の読み筋 日の丸技術「救う」ではなく勝ちに行け,朝日新聞.120316,朝刊,札幌版