科学は?

長谷川 真理子

…。科学は仮説構築の連続であり、対立競合する仮説を観察に対して照合することによって、より事実に近い仮説を選び出していく手続きである。…。

…。なにものからも離れた純粋に「客観的」な態度などというものは、そもそも存在しない。しかし私たちの手持ちのやり方の中では科学は一番客観的だし、間違いを正すための自浄機構を備えている。研究者の偏見や信念が研究の足を引っ張ることもあるが、いずれ間違いは正される。科学は、まったくの真実そのものを提供するわけではないが、手持ちの説の中から、より真実に近そうなものをとっていくことによって、つねに改訂の可能性を前提としている。…。

2005・2009/01/30
長谷川眞理子,1999,科学の目 科学のこころ,87p,214pp,岩波新書,岩波書店