科学と非科学

ニコラス・ハンフリー

科学と非科学のあいだのこの非対称の理由は、科学が非科学よりもすぐれた−はるかに経済的で、エレガントで美しい−説明を提供するということ(それはあるのだが)だけではない。少なくとも唯一の理由ではない。もっと強力な理由は、科学がまさにその本性において参加型の過程であるのに対し、非科学はそうではないことだと、私は言いたい。

科学を学ぶことで、私たちは、なぜ私たちがあれやこれやを信じるべきなのかを学ぶのである。科学は甘言でつることはせず、命じることもなく、何かがなぜそうであるかの事実的、論理的論拠を並べるのである。−そして私たちに、それに賛成し、自分自身で理解するよう誘うのである。したがって、誰かが科学的説明をしたときには、彼らはある重要な意味で、それを自分のものとして選んでしまっているのである。

2009/01/15
ニコラス・ハンフリー(Nicholas・K.・Humphrey),2004,獲得と喪失 進化心理学から見た心と体,15章子供に何を語ればいいのか?,364p,460pp,紀伊國屋書店