なぜ撮りたいのか

蜷川実花

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よくカメラは瞬間を切り取る機械、と言いますがほんとうにそうです。例えばシャッタースピード60分の1ということは、1秒の60分の1の瞬間が印画紙に焼き付いていることになります。当たり前なのですが、実感すると結構、感動します。

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でも写真には残せるんです。そのとき目に映ったもの、その場所の匂い、温度、気持ち、全てが何十分の一秒でフィルムに焼き付きます。よーく考えるとすごいことです!残せないものが残せるんですから。

私にとってなぜ撮るのかは、残したいからとニアイコールでした。年間13万回も残したい瞬間に出会えるなんて、なんて幸せなことでしょう。…。

2008/10/01
蜷川美花(にながわ みか),2008,写真漬けの日々は続く,2008/10/01 ,朝日新聞夕刊(札幌版)「彩・美・風」