思考を成り立たせるには

帚木蓬生

…。

−観察し、由来をたどり、揺さぶってみる。

なるほど至言だ。この三つのどれが欠けても、確固とした思考は成立しない。目の前の事物をトコトン見つめなければ、思考は立脚点、いやそもそも出発点を失う。由来をたどらないとしたら、歴史が蓄積してくれた先人たちの財産を生かせない。そして最後に揺さぶりがなければ、思考は既成概念の踏襲に終わり、発展もしないし独創も生まれないのだ。

1996/08/01
帚木蓬生(ははきぎ ほうせい),1993,臓器農場,297p,617pp,新潮文庫,新潮社