鷲田:僕はよく「思考には溜めがいるんですよ」って言うんですが、ある人に「じゃあ溜めをつくるにはどうしたらいいのか」と聞かれました(笑い)。
苅部:「実用」指向ですね。
鷲田:「溜めをつくろう」というのは、そういう問いはやめましょうということなんです。でも、わからないことに耐えられない。すべてが説明できるとは限らないという苦痛をヒリヒリと感じ、息を詰めていないといけないということもあるんです。わからないことへの感受性をどう持ち続けるか。
僕らが生きている時代って「時を駆る」でしょ。あらかじめやっておくとか、先を読むとか。先に先に、という思考法です。でも、答えを急いで出さず、問いを最後まで引き受ける。じっくり考えたり、寝かせたり。すぐにわかろうとしないで、機が熟すのを待つ。それも大切じゃないでしょうか。