原始神経システムと恐怖

ラッシュ・W.ドージアJr

…。(脳の)辺縁系が行動を支配していて、理性で恐怖をぬぐい去ることができないのである。辺縁系は概してその構造が高度な新皮質よりも旧式なので、考え方がまったくちがう。辺縁系のなかでもとくに扁桃体を中心とする領域は、個々の対象の違いを認識するのが苦手だ。本書では辺縁系をふくむ脳の原始的な部分を「原始神経システム」、もっと高度な新皮質が支配する回路を「高等神経システム」と呼ぶことにしよう。新皮質は脳のなかでももっとも新しく進化した部分というだけでなく、意識の座でもあり、したがって自己を認識する唯一のシステムである。

2007/12/24
ラッシュ・W.ドージアJr(Rush W.,Jr. Dozier),桃井緑美子訳,2003,人はなぜに憎むのか,31p,339pp,河出書房新社