ボランティアの心得

河合隼雄

このようなボランティアはともかく熱心に働いて利益を多くあげるとよい、と考える「仕事」感覚をそのままボランティアにもちこみ、利益の代わりに自分の「善意」ということを入れて、それによって自分は随分と「よいこと」をしたと思っている。既に述べたように、現在では職業においても「利益」のみを優先に考えていたのでは、ほんとうに生きることにつながっていない。ボランティアの場合も「善意」優先では困ってしまう。よほど広い視野をもち、他人の心を察することができないと、単純な「仕事」感覚でボランティアをしては、近所迷惑を引き起こすだけである

ボランティアをするにしても「善意の押し売り」にならないようにするためには、そこに「遊び心」を入れてはどうであろう。そんな不真面目なとすぐに怒られそうだが、ここでいう「遊び心」というのは、いいかげんな気持ちや態度というのではなく心に余裕をもたせること、自分の行為を少し離れたところから、すぐ役立つとか社会のためとかいうのに捕らわれずに眺めてみること、を言っている。遊びというのは他人のためにするのではなく、自分が楽しい、面白いからするものだ。ボランティアもそれに近いのではないだろうか。他人のためなどではなく、それをすることが自分にとって意味があるからする。つまり、やらせてもらっているのである。仕事ではなく遊びでやっていると思うと、少なくとも威張りたい気持ちはなくなるだろう。「遊び心」として余裕をもって見ている方が、自分のしていることのほんとうの意味がよく見えてくる。

2003/11/24
河合隼雄(かわい はやお),1997,仕事づくりの構図,河合隼雄・内橋克人 編,現代文化論4,251-268,268pp,岩波書店