最初、鍬で田んぼを耕した。それが鋤になり、耕耘機になり、トラクターになる。ずいぶんと能率はあがるようになった。しかし、いくらトラクターだからといって、米を生産するわけではない。あくまで田んぼを耕す道具に過ぎない。本質的には鍬と同じなのだ。大型の鍬に過ぎない。
ところが工業のほうでは、大型の新しい性能の設備をすれば、機会が商品そのものを生み出す。地下足袋を1日100足製造する設備は500足にも、1000足にもなる。
農業の機械化と工業のそれとは、そこに根本的な違いがある。そのからくりに私たちは長い間気がつかなかった。そして、今でも気がつかないものが多い。